高いから大切にする?大切にするものは高いもの?

ビート・ザ・コントロール
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台風の最中に神奈川県に帰ってきました。

バスがすでになくなっていたので、お客さんが少ないのか行列のタクシーにスーツケースとともに乗り込み、実家へ。

風の中を実家までたどり着き、まずやったことといったら熱田神宮から品川での打ち合わせ、新宿での食事と映画に付き合ってくれたヴィンテージのモヘアでつくったスーツの手入れ。そして、コードバンのシューズの手入れ。

8月1日から8日までは雨が降らないという感覚だったのですが、最後の最後でやってきました。おかげさまで身も心もスッキリしつつも、スーツもシューズもしっとりです。

コスタやアントニオが仕立ててくれたのだから、というつくり手への感謝もありますし、自分自身が気に入っているもの、一生をともにするパートナーでもあります。

雨と汗が混在しているスーツの上着に霧吹きで水をかけ、ペトロニウスのセッテピエゲにもミラノの河合さんに教わったとおりに霧吹きで水をかけ、乾いた頃にブラシでさっと汚れを落としてあげる。

汗かきな僕ではありますが、この方法を教わったおかげで気持ち裏地や結び目が生き生きと輝いているように思えます。大量の汗を吸い込んでしまうと、乾燥した時に白い粉のようなものが付着してしまうのですが、これのケアができているというか、そんな感じです。

水に弱いコードバンが心配ではありましたが、気になっていた症状は出ておらず(たぶん、、、)、飛んだ水滴の汚れが目立つ程度でした。

外出先でもティッシュペーパーで水滴を吸い取っていたことが功を奏したのかもしれません。

昨晩の内にスーツケースから木型を取り出して、シューズに装着して一晩寝かし、今日になってからリムーバーで表面の油性汚れと水性汚れを落としてあげました。そして今は陰干し中。しばらく置いておき、栄養補給のクリームを塗り込みたいと思います。

この9日間で魚や果物、お米を僕から受け取った母に、お米はどうだった?と聞くと、香りが立って艶があって美味しいと。

父がお米に関しては一家言あるというか、まあ一言あるので、母も毎日のお米炊きで大変なわけです。それで、京都の米穀店からお米を送り、美味しい炊き方のリーフレットも送付してもらったのですが…

お米の炊き方に変化がありました。リーフレット通りに炊いてみたとのこと。

エラい大変だったわよ、とはいうものの、味わいの違いは自分でも感じられるようで、先ほどまで今日の夕食のおかずは…と美味しいお米があるから楽だわねーと普段よりおかず検討がウキウキだったようです。親孝行ですね。

普段のお米よりも高価なお米だったようで、だからこそリーフレット通りに炊いてみた、という動機も少しはあると思います。

しかし本当に美味しい炊き方があるならば、手間ひまかけてでもそれをすべきなんじゃないかな、って思うんです。そういう意味で高価さというのは、動機を生み出してくれるものなのかもしれません。

僕は小さい頃からものを大切にする方で、結構な期間、使い続けたり、着続けたりしています。手入れをして使い続けることができるのであれば、カラダに馴染みますしいい気分になります。

持ち物を眺めてみると、一般的には高価なものであることが多いようですが、高価であることは大切にする理由ではありません。

例えば、普段使っている万年筆でいうと、ラミーのサファリを使っています。これは、モンブランと比べるとその10分の1とか20分の1の価格で購入できるものです。

しかし、毎日のように3本のラミーを使い、インキがなくなるとボトルから吸入し、ペン先周りのインキをティッシュペーパーでキレイにし、毎日のように見た目の美しさを意識して目にとまるところに置いておきます。

マルナオのお箸は洋食屋さんで使ったあとは、ホテルのお湯を沸かし、さっと熱湯で洗浄してティッシュペーパーの上で水分を吸収し、実家に帰ってきてから母に洗ってもらいました。

僕自身がいい気分になるもの、たぶんそれは愛着のあるものなのですが、そういうものを日常的に使う生活にこそ、僕は豊かさがあるように思います。

歴史があるもの、職人が手づくりしたもの、つくり手の物語が感じられるもの。

僕が愛着を感じるもの、普段から日常的に身に着けておきたいものは、そういうものです。

昨日8月8日に、ミラノの河合さんからこんなメッセージをいただきました。

こんにちは小野さん。
先日はありがとうございました。

早速ですが僕のジャケットの生地、極めて近いモノを奇跡的に見つけました!

代替のチョイスとしてオススメした現行品とも色合いがかなり異なりかなり似ています。

夏でも着ることができるジャケットを、と考えておりまして、「どんな生地が?」と聞かれると、河合さんのブルーのモヘアがいいです、と回答。

ネクタイもそうなのですが、河合さんが締めていたグレーのネクタイの風合いがエラい好みで、まあ、この人が、という方が着ているものに目が行くわけなのですが、実際に愛着を持って着続けているから、ネクタイもジャケットも喜んでいるように見えるわけです。

一緒に年齢を重ねていくというか、そんな感じです。

今回、河合さんがエラい探してくださったようで、これだけでも愛着が湧いてきます。先月受け取ったツイードのジャケットとグレーのネクタイに触れるたびに、河合さんの表情が脳裏をよぎるように。

だから僕にとってモノとは、モノ以上に近い関係性であり、一生を添い遂げていく、人のような関係性なのだと思います。

僕にとって大切なものは物語。そういったものに囲まれた日常。

そういうものに身を包み、カバンやスーツケースに携えての生活が、この上ない豊かさをもたらしてくれるのです。

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