本物は物語で味わい、苦手を凌駕する。

ひとりごと
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2018年はじめての京料理屋さんは、年末ということもありまして食べ納めの1日でもありました。

食べ納めの料理はカニ。以前にもこちらでカニをいただきましたが、カニを好む人たちに対して斜めに見ていた僕でも、無言でむしゃぶりついてしまうカニが、この店にはあります。

6品の品が出されたとき、ご主人が言いました。

右下のものはカライので、ちょっとずつ食べてください、と。

なるほど、コレは見た目からしてカラスミっぽいな、とカラスミを食べるかのようにほんの少し、僕はカラスミが苦手なので、、、口に運ぶと、、、

なにこれ、美味しい。

僕の知っているカラスミじゃない。

あとで知ったところによると、コレはカラスミではなく塩雲丹だそうですが、何にしてもあの濃縮されたようなモノを苦手としている僕からしてみたら、この塩雲丹は奇跡の一品なわけで。

驚く僕をカウンターの向こうから見たご主人が口を開くと、

「コレしか本物はないですから」

と一言。

なんでも他の塩雲丹は薄まってしまっていて(水でとか言っていたかな、、、)、塩雲丹じゃないと。

そんなニュアンスのことを言っていたように思います。

この塩雲丹を美味しいと感じるのであれば、このご主人が仕入れてくるカラスミだって美味しいに違いない。

この日はカニを食べてもぷりっぷりのエビをアタマからむしゃぶりついても、口の中がかゆくなることはなく、僕の魚アレルギーの疑いは、やはり気のせいなんじゃなかとなりました。

「アレルギーなのに食べて美味しくなかったら、最悪ですからね」

こんなふうに笑顔で顔をクシャッとさせて言っていたと思うのですが、なんともワイルドな一言です。美味しさはアレルギーを吹き飛ばす的なニュアンスだったかと思いきや、どうせアレルギーなんだったら美味しいものでアレルギーで行こうぜと。

まあ自己責任ですけどね。

僕の場合はまだかゆみ程度ですから、食べることができるので。

しかし同じ塩雲丹でもこんなに美味しいのかと考えてみると、このご主人はなぜこんな塩雲丹を仕入れることができるのだろうとか、いったいなぜこの塩雲丹をつくる職人は知られていないのだろうとか、どうやってつくっているのだろうとか、いろいろ想像することができます。

食に関してはストライクゾーンが広い僕でさえ、美味しいとは感じない塩雲丹があるなかで、コレは美味しいと唸る一品をつくるなんてのはそれだけで興味を持ちます。

長い年月の試行錯誤の向こうに、雲丹たちと雲丹をとる海女さんたち、そして塩雲丹をつくる職人たちが見えるわけで。

目の前の塩雲丹から、物語が見えるというか。

河合さんが仕立ててくれたツイードの生地が、エジンバラの小さな機織り屋さんからやってきたという物語のように。

木坂さんが言うように、物語が見えない人、わからない人もいるというのはうなずけるところですから、誰にでも勧められるお店ではないのだろうなぁ、とは思いますけれど。

わかる人と一緒に行きたい、そんなお店です。

P.S.
写真のみかんも、エラい旨味がぎゅっと濃縮されていて、酸っぱくて甘いんです。。。名前失念しました。。。

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