「禁断の箱を開けた」というようなことを言っていたのは島田さんだったか、木坂さんだったか定かではないですが、しかし昨日の受注会ではそういう体験を垣間見た感じがしまして、その広がりと奥行きの深さに、果てしない感はどこまでも膨張していきます。
昨日という日は仮縫いを確かめるためにこそあったんだという感じで、仕事を次々に終えていったと記憶していますが、受注会会場につくとコスタさんとアントニオさんからのクリスマスプレンゼントを受け取りつつ、その後は履いてみろと言うので仮縫いされた靴を試着。
仮縫いの靴と対面する前、島田さん宛に木坂さんから、僕の靴が良さげっぽいような話を聞いていたのですが、
この時僕は、仮縫いの状態でなぜそこまでわかるんだろうとちょっと不思議に思っていた次第です。
スーツの仮縫いを想像してみると、ツギハギのような感じに見えなくもない。だから、靴もそんな感じだろうと、仮縫いが終わったらそれをばらして、新たにつくり直すのだろうと、そんなふうに考えていました。
しかし仮縫いの靴とご対面になった時、え、それって完成品として置いてあった靴じゃないの?って程度に(かなりの仕上がりだと思いますが)、完成された靴でした。
強いていうならば、僕が望んでいた靴底のゴムシート貼りがされていなかったので、僕向けに完成したものではないんだろうな、とは感じましたが。
その完成されているような仮縫いの靴を履くと、思わず顔がほころんでくるほど。
吸い付くような甲とスライムに包まれたかのようなクッション部分。
うわ、これホントに未体験ゾーンの靴だよ、と感じ、さらにそこから微調整を入れていくためのメモを始める。
僕はというとその履き心地が気持ちよく、しばらく部屋の中で履きっぱなしでいたほど。
履けば履くほど馴染む感がありまして、当初きついと感じた右側のほうが、しばらく経ってからは吸い付き感が出てきて、離れがたいものになりました。
しかもこれは仮縫いだという。
仮縫いってことはこれをばらしてまたつくり直すんでしょ、と聞くと、
いや、そうじゃない。最初からつくるんだ、ときた。
プロフェッショナルとはこういうことを言うんだな、という見本のように感じます。
これは期待できると思っていた頃に、アントニオさんから一つの提案。
「その仮縫い靴、この価格で譲ってもいいよ」
とのこと。すると島田さんが、
「小野さん、しかもこれはワンタイムオファーですよ!」
ときた。
正直このやり取りだけで購入したくなった僕ですが、価格を加味して考えると、これは買っておいたほうがいいと思った次第。
なぜなら、靴は(スーツもですが)休ませながら使ったほうがいいと考えていること、
そして、同じ靴を2つだとスペアとして交代交代で履けると考えていること、
さらに3つ目は、その日持って帰ることができるからです。
これは確かに断れないオファーだ、としばらく唸ったあと、このオファーを受けることに決めました。
初めての靴をそばにおいておきたいと思いましたし、何より、脱ぎたくなかったというのもあります。
それほどまでに、今まで経験した靴とは違う。
いいものってあるんですね、本当に。
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