王様の仕立て屋に学ぶ一流の仕事(その2)。

ビート・ザ・コントロール
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昨日の続き。

靴の採寸をするということで、アントニオが画用紙を広げ、その上に足を置く。

するとアントニオが何やら思案顔をした後、ハッと思い出したようにエメラルドブルーの縁が鮮やかなメガネを掛け、ボールペンで足の形に沿ってラインを引いていく。

時折僕の膝を押したり離したりして、多分足と地面との接地面を見ているのでしょうが、その具合に応じてラインを太くしたり二重にしたり、

そして巻き尺で数カ所の採寸を行い、数字をメモしていったり。

左右で特に形が異なる場所については、手で押したり写真を撮ったりしながら、

「ここは折れたことある?」

・・と(たぶんですが)聞いてきたので、いや折れたことはないよ、と。

しかしどうもこの感じは普通じゃないんだよな、という雰囲気を発しながら、足の全体写真を数枚撮り、

画用紙に僕の名前を書いて採寸は終了。

そして革選びは「スーツがこの色なら、こげ茶が良いね」となり、あとでベルトとあわせてオーダー。

ところで圧巻だったのは、足の採寸が終わろうかという時に、コスタも僕の足に目をやり、

「野球はどのくらいやっていたの?」

と質問をしてきた時。

アントニオかコスタか、覚えていないのですが、何かスポーツをやっているのかと聞かれ、野球をやっていたことは伝えていました。

そしてこの時、足を見ながらどのくらいやっていたのかを聞かれたので、なんかスゴイところを見ているな、と感じたんですよね。

高校までやっていましたよ、と伝えると、そうだろう、それは普通の足じゃないみたいな顔になり、

「靴をはくといつも痛くなるところはどこだ」

のような質問が来て、うわ、これは期待できる、と思ったものです。

僕はどんな靴を履いても、決まって足の甲の部分、そして親指と甲の付け根が痛くなり、水ぶくれになって血が流れるほどだったんですよね。

そしてどうもコスタとアントニオの様子からすると、左側の足の甲とか親指との付け根あたりが、右側よりも太いから要注意だね、と。

そんな感じの話をしていたんじゃないかな、と思います。

フィッターというか靴職人というか、どちらか覚えていませんが、靴をつくる人は足を見る、そんなことを言っていたと島田さんが教えてくれました。

これ、コピーを書くときも同様で、読み手の脳を僕らは見るわけなんですけど、

コスタとアントニオの様子から、細部にまで細やかに目をやる、というか細部まで細やかに感じ取り、そこから感じる違和感をそのままにしないという、仕事に対する姿勢を感じました。

このくらいならいいだろうとか、そういうのがないんですよね。

彼らの仕事は王様の仕立て屋と言うか、そういう表現をしても誇張でないようなもののようで、実際に顧客層もそういうものらしく。

アントニオの工房はCarabiniere(カラビニエーレと言うそうです。国防省警察官の意)の施設内に創業からあるそうで、アントニオで三代目。カラビニエーレのオフィシャルブーツを提供している模様。

ローマの名店と言われるGATTOと交流があり、お互いに情報提供をしているとか。

コスタが率いるサルトはジャケット、パンツ、シャツ、ネクタイと、それぞれの専業から成り立っており、島田さんの話を聞くと、もはやこれは伝統工芸品なんじゃないかと思うほど。

製品としての価値を考えても、10年とか20年とか、手直ししながら着続け、履き続けることができるそうなので、流行とかがわからない僕にしてみれば、こっちのほうがいいなあ、とも思ったわけで。

「どんなスーツが良い?」

という感じで、スーツの採寸時は聞いてくれたのだけれども、スタイルについてはどんなものが似合うのかわからないし、センスに頼りたいという気持ちもあったので、

「おまかせで」

と伝えると、

「じゃあ、誰もが振り向くセクシーなスーツにしてやるぜ」

と言ったかどうかはわからないけれども、そんな雰囲気でウインクしながら採寸は進む。

通訳しながらコスタやアントニオの受注会を開催してくれる人物が言うに、

「この生地のスーツなら、期待していいと思いますよ」

とのこと。

木坂さんが手に取り、「ああ、コレのダブルをつくったことがある」と話していて、すると島田さんが「小野さんもダブルがいいんじゃないですかね」ときたので、

うーんと悩みながらも、一着はシングルでジレ付きがほしいと思っていたので、シングルでつくることに。

彼らの手つきは柔らかく繊細で、触れられるだけでそこの緊張感が和らぐほど。

あ、これがイタリア男性のモテる秘訣か、なんて思ってしまうほどの感触でした。

朝7時過ぎまでのパーティーが終わり、彼らのお客さんに寄り添う姿勢というか、ものづくりとお客さんがともにあることを感じさせる振る舞いとか、

一流の仕事とはこういうものをいうんだという空気が伝わってきまして、それもまたこういう受注会に参加する意味でもあるんだろうな、と思いました。

ものに対する細部までのこだわりは当然として、そこに人へのこだわりを入れてはじめてものづくりになるというか。

神は細部に宿るというのはもしかしたら、

人に寄り添うこと、目の前の人にうれしくなってもらうことを加えてはじめて、その言葉の意味が体感できるんじゃないかな・・・。

良い学びの日になりました。島田さんに感謝です。

P.S.
時間があればずっと触っていたいくらいでしたが、靴の中に入れるシューツリーってあるじゃないですか。あれ、当たり前なんですけど、型取りした木型をもとにつくられるので、滑らかにシュッと入ってスッポリ収まるんですよね。

その収まり感がとても心地よくて、何度も何度も入れては出して、入れては出してを繰り返していました。

靴は6月の納品、スーツは4月の納品になるようですが、これらを待つ楽しみというのも、新たな経験として自分の中に入ってきたのは、よかったと思います。

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