成長する機会を選ぶ。

「どこか気になるところはありますか?あればなんでも話してください」

そう國澤さんが言うので、どこが気になるかな・・・と履いた瞬間に感じた違和感を言葉にしようと単語を探す。

出てきた言葉が、「全体的にゆるい感じがします。つま先近辺のゆるさはちょうどいいと感じるのですが、かかとのあたりが特にゆるくて、あ、こんなふうに歩くとかかとが浮いちゃうんです」というものでした。

靴を仕上げてイタリアのローマからはるばる持ってきてくれたアントニオさんは、いい出来だろう?とジェスチャーしてニコリと笑っているので、う、コレはこのままのかかとでもいいかなぁ、と思ったのですが、

前回の靴を受注会に履いてきたこともあり、そのかかとの浮かないフィット感、そして靴ずれ知らずの程よい締付け具合が気に入っていたので、違和感を伝えてみた次第。すると、

前回と異なり、今回はコードヴァンであること、外羽根であることなど、だから違った感覚を覚えるのは仕方がないのだけれども、と前置きした上で、

でも、2mm程度なら詰められるから、一度ローマに持って帰るけれどもいいものに仕上げてくるよ、みたいな感じで話してくれて、はるばる東京ローマ間を再び飛行機で往復する靴のことを思うと、愛着が湧いてくるから面白いものです。

そんなわけで、今回の納品はなく、次回12月の納品に変更。

ちょうど2016年の10月、1年前ですね、はじめて受注会に参加した頃と比べると、コミュニケーションを通じて歩み寄っていくオーダーの魅力というか、醍醐味というか、いわゆる「早い良い安い」という利点だけではない、というよりも良い以外(人によりけりですが)はないと言っていい(といってもリーズナブルと感じる人もきっといると思います)、なんか「人」みたいですよね、そういう世界観に魅了されています。

買い手が自分の好みを伝えるだけではない、売り手がモノの特長と買い手の特長からこっちの方がいい、なぜなら・・・と対話をすることでつくりあげていく。ベネフィットの書き出しですね、セールスライティングでいうところの。

どんなにいいピッチャーでもそれにふさわしいキャッチャーがいなければ、観客をうならせることはできない。共同でつくる芸術みたいなものだと観たことがありますが、オーダーもそういうものだと感じています。

そしてそれは、経験を積み上げることによって、より理解できるようにもなる。

1年間、靴を履き続けた経験、そして1年前から今に至るまでにアントニオさんと対話をし続けてきた経験。直接の言葉ではなくとも、履き続けることで気づく対話もある。

ここまで考えて靴をつくっているのかもしれない、とかですね。

作り手の力量を引き出すためには、履き手もまたそれにふさわしく成長する必要がある。なぜなら、感じるフィット感、違和感を伝えられなければ、その靴が履き手にとって唯一無二のものにはならないから。

モノが人を選ぶ、という言葉を聞いたことがありますが、オーダーを経験して思うのは、モノが人を成長させるのかな、ということでして、

だからこそ履いてみた時に感じたこと、見た時に感じたこと、触れた時に感じたことなどを適確に表現する必要がある。

「柔らかい」と伝えるのか「柔和な」と伝えるのか、同じような表現であっても、伝わる感覚は異なる。

いろいろな感覚を、知ることからですね、言葉にするのは。

六本木の街を歩いている時、アントニオさんが僕の足元を優しく眺めていたのですが、彼と一緒に過ごすことで靴はより成長していく。そんな感覚を覚えました。

成長する機会を選ぶ。人間関係と、同じです。

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