まあ、何でもチャレンジしてみるといい、とは思うんです、僕の基本姿勢として。
やってみなければ、自分の向き不向きってわからないですし、体験することで言葉が生まれると思うので。
でも、、、事業や商品の「誰に何を約束するのかを一言で表現する」、いわゆるコンセプト設計をするとき、頭を抱えることがあります。
それは、「僕は世界を変えたい、だからこの事業をやろうとしているんです」と語り、でもその人の行動と言動を思い出してみると、世界を変えるような行動も言動もしていない、という現実に直面したときです。
キレイ好きなんです、という人とホテルの部屋をご一緒してみたら、部屋もお手洗いも散乱し放題だったり、腰痛はこうすると治りますよ、と語る医師が顔をしかめて腰を手でさすっていたりしたら、アレ???ってなる。
オレは変態だ!と叫ぶ人ってそう見かけませんが、誰が評してもあの人は几帳面で真面目でアッチの方も品行方正で、、、という人が「オレは変態だ!」と叫んだら、え???なにかの間違いじゃない???ってなると思うんです。
ドラえもんで言うと、出来杉くんがそんなこというかな、って感じ。
でもコンセプト設計の現場では、こんなことが日常的に発生しているように感じています、、、それともオレがおかしいのだろうか、、、
バンコク近郊のお寺に行ってきましたので、その写真とともに。
システム1とシステム2
バットとボールは合わせて1ドル10セントです。
バットはボールより1ドル高いです。
ではボールはいくらでしょう?
『ファスト&スロー(上)』ダニエル・カーネマン著/村井章子訳/早川書房刊
システム1を知るとき、この問題がとてもわかりやすく教えてくれそうなので、引用します。
この答え、パッと直感で答えてみてください。
再び、引用します。
きっとあなたの頭の中には数字が閃いたことだろう。もちろんそれは、10、つまり10セントだ。この簡単な問題の特徴は、すぐに答が思い浮かぶこと、そしてその答は、直感的で説得力があり―そしてまちがっていることである。検算してみれば、すぐにまちがっていると気づく。なぜなら、ボールが10セントなら、1ドル高いバットは1ドル10セントになり、合計で1ドル20セントになってしまうからだ。正解は5セントである。始めから正解を答えた人も、直感的な10セントという数字が思い浮かんだと考えてまちがいない。この人たちは、直感に何とか抵抗できただけである。
同上
カンタンにいってしまうと、我々の脳には2つの思考モードがあって、「システム1」とは何の努力もせずに印象や感覚を生み出すもの、「システム2」は、複雑な計算など頭を使わなければできない困難な知的活動を行うもの。
「システム1」が無意識の自動運転モードで「1+1」と見たらつい計算してしまうもので、「システム2」が「23×56」を意識的に頭を使って計算するモード。
この本の中でダニエル・カーネマンは、システム1のもたらす直感に抗うことはできても、無視することはできない、と言っています。
たとえば、目の前に斧を持って何やら喚き散らしている人がいたら、、、思わず見てしまうのがシステム1。
その後、意識的に見ないふりをするのはシステム2の働き。
電車や公共施設で言い合いをしている男女がいたら、つい見てしまうのがシステム1。
見ないほうがいいかなと意識的に目をそらすのはシステム2。
バンコクの食堂で食事をしていると、子どもや大人の物売りがやってくるのですが、テーブルのすぐそこまで近寄ってくるので、つい見てしまいそうになるのがシステム1。
しかし見てしまうと買いたくもないものを買わないといけない気分になるから、目を合わせないようにするのがシステム2。
こんな感じで、意識を働かせることはできても(システム2を稼働させることはできても)、「つい」何かをしてしまったり、感じてしまったりというシステム1の自動運転は、止めることはできない、ということです。
そして、事業のコンセプト設計をしていると、このシステム1の働きを無視している事態に直面します。
ええ、実は、僕もなんです、、、
システム1は勝手に印象を持つ…言葉や見た目から
ココからはダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』を途中まで読んで学んだこと、そして経験から学んだことを交えて、私見を書きます。
システム1の思考モード、直感が生み出した印象を、僕たちは無視することができない。
たとえばバンコクでは、繁華街の路上ほど、赤ちゃんを抱えたお母さんの物乞いや、片脚がなく地面をほふく前進している物乞いに出会います。
1度や2度ならまだしも、毎日何回も見かけるので、僕のシステム1は「またか、、、職業物乞いってことかな、、、仕事すればいいのに、、、」と直感してしまいます(この気持ちを誰かに言うことはシステム2が働いて、そんな事考えているなんてサイテーと思われたら嫌だな、、、とか結論づけて抑えられるけど、自分のなかにその気持ち自体が芽生えることは、抑えられないんです)。
でも、路上の物乞いが、道ばたで百科事典とか経営の本とかを読んでいたら、「なんかインテリ感が漂っているな、、、でも身なりは物乞いだし、、、なんか変だぞ?」と直感し、システム2による洞察が始まります。
その直感に違和感を感じなければ、だいたい自分にとっては正解だし、「なんかうまくいえないけど変な気がする」と違和感を感じれば、立ち止まってその正体を解明したほうがいいと僕は考えています。
そしてコレは、会社をつくったり、事業をつくったり、商品をつくったり、セールスしたりするときにも当てはまると感じていたんです。
お客さんのシステム1に違和感を感じさせたらNG
嘘つきは繁栄することがない。
コレは僕が学んだ教訓のようなものです。
画像では痩せていたけれど、会ってみたら豊満過ぎる栄養士からダイエットのアドバイスをされても「ホントかな?」と感じますし、肩こりの医師から肩こり対策をアドバイスされても「ホントかな?」と感じますし、「この子はオレの好みだ!」と喜び勇んでお店を予約するも出てきた本人を前に意気消沈、、、なんてことは日常茶飯事です。
リピートはないですし、誰かに勧めようとも思いません。
インターネットとスマホのおかげで、オンラインでの売買が活発な現在です。
会わずに売買できますから、僕はその分どこかで信頼感を探します。
いざ商品をオンラインで買おうとするとき、「ウチが最安値です」という見出しがあれば、ほかに安いお店がないかをGoogleで調べてみたり、価格コムで調べてみたり、口コミを探してみたり。
システム1が違和感を感じたから、信頼するに至らず、、、システム2による調査が始まった、という具合でしょうか。
しかし、事業のコンセプト設計をしていると、書い手のシステム1を無視しているのではないか、そんな不自然さを感じることがあります。
なぜなら、事業を営む人、商品の売り手の見た目や言葉、雰囲気からにじみ出る印象とは異なる印象で売り出したい、と考えている人のほうが多いと体感しているからです。
言葉や装いをより良く見せることはできますし、それがその人にふさわしいと感じられるものであれば、違和感を感じてシステム2が注意深く論理的に考えることにはなりません。
しかし、お客さんが売る側の雰囲気と言葉に「なんか違和感を感じるぞ?」となると、システム2が注意深く働きだして、矛盾点を探そうとします。
そしてその矛盾点は、見つかってしまうものなのです。
システム1を無視しているインターネット上のビジネス
野口整体や木坂さんの人間セミナーなどで言われているように、人は見た目で判断することが可能です(100%ではなくても、アタリはつけられると、僕も体感しています)。
見た目がちょこちょこ動きそうなタイプなら、好奇心はあるけれどはじめてのことは怖くてできない、目の前に立つと威圧感を感じるタイプなら、勝ち負けにこだわる、などです。
僕たちは無意識に、目の前の人の見た目から、そういう印象を実は感じてしまっている、ってことです。
コレってシステム1の働きだよな、と僕は思うわけですが、だったらシステム1を会社運営や事業運営にも反映させないと、売れないんじゃないか、って。
キャッチコピーを試行錯誤してつくっても、デザインをキレイに読みやすくしても、中身が伴っていないと、形式の努力はムダになってしまう。
ああ、そうか。。。
僕の引き受ける仕事はコンセプトやライティングなど、ある意味で形式をつくることなのだけれども、中身が伴っていなければ僕のシステム1は、「また売れないだろうな」と直感してしまう、のかもしれません。。。
よりよく見せたいなら、自分を磨いて見せよう
セールスライターとして独立するなら、セールスライターの名刺をつくってセルフイメージを変えよう。
なんてことが言われていましたし、今でもそういうことを言われている人がいるのかもしれません。
僕はこれに違和感を感じていて、、、なぜなら、たいした努力もしていない人がセールスライターですと名乗っても、誰が信じるんだろう?と考えるからです。
名刺をつくることはいい、でも、本当に必要な行動は、セールスライティングで成果を出すこと、なんですよね。
そのために必要なのは、セールスレターを実戦で書くことです。
だから、実戦環境のなかに身を投じる必要があります。
これに全力を尽くさない人が名刺をつくっても、、、バレちゃいますよね。
わかりやすいキャッチコピーやレイアウト、メディアならLINEとかInstagramなど、とっつきやすい形式は大事ですが、中身が伴わないと、形式の努力は実を結びません。
人目を引こうと「オレは変態なんです」、と高らかに宣言するより大事なことは、自分の周囲の人からどういうふうに見られているのか、周囲のシステム1は自分をどう感じているのかを知ること。
そしてそのシステム1を活かしてコンセプト設計やライティングを行うことなのだと、僕は思います。
よりよく見せたいなら、周囲を合わせ鏡にして自分を磨こう。
そういう結論になるのかなぁ。
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