その日、イスタンブルはやや雲があった。
朝、ユーヌスエムレの玄関口に出てみると・・・。
「オノさん?」
カズミとの再開だ。
ドミトリーはほかに客がいない状態だったので、
前日のケンジさんとの貸しきり状態同様、
その日はカズミと貸しきり状態に。
この日出発するケンジさんも誘い、
カズミたっての希望で、ガラタ地区の中華食べ放題に行くことに。
行く途中で、伸びるアイスのドンドゥルマとサバサンドを食べる。
「オノさん。サバサンド、あそこで売ってますよ。」
食べ物に関してはカズミに任せれば苦労しない。
彼女が勧めるだけあって、その味は絶品だ。
彼女が言うには、トルコのパンだから合うのだということだ。
そして、中華の食べ放題へ。
「これおいしーい!中華街よりよっぽどおいしいですよね!」
いつも歩き方の食べ物ガイドを手放さないカズミの、
すばらしく美しい食べっぷりに目を見張りながら、
ケンジさんと私もバクバク食べる。
この地区は、若者街だ。
日本で言えば渋谷とか新宿とかそのあたりだろうか。
道行く人の格好は欧米人のそれと同じで、洗練されている。
ギョレメやサフランボルで感じた素朴さは、そこにはない。
どことなく冷たささえ、感じるときもある街だ。
その街で、カズミは民族衣装的デザインのワンピースを
手に取る。が、値段を店員が勘違いしたため、予算オーバーで
買えずじまい。
途中、空港への送迎時間の関係でケンジさんと別れ、
カズミとカフェに入る。
「これ、今まで一番リッチな感じのとこじゃない?」
「日本だったら、べらぼうに高いんだろうなぁ。」
なんてことを話しながら、バクラヴァを頬張る。
これがまた絶品だ。
そこで、事件が発生する。
実は、カズミは今朝降りたバスの中に忘れ物をしたらしいのだ。
元彼氏のお母さんがくれた、お守り代わりのネックレスなど。
「何で、今朝会ったときにいわなかったの?」
「いや、タバコ吸おうと思ったらタバコがなくて、
忘れた!と思ったんですけど、船に乗って歩き方見てたら、
中華のことで頭がいっぱいになっちゃって。」
・・・なんという素敵な思考なのだろう。
明日2人ともイスタンブルを発つので、
トルコ語ぺらぺらの(当たり前だが)メスットに、
バス会社に連絡してもらうことに。
「ノープロブレム!一時間後に電話するよ。」
といって、メスットは夕食を食べ始めた。
・・・大丈夫か?
向かいのドイドイという店で、カズミと食事をする。
「実は、恋しているんです。」
「トルコ料理にか?」
てっきりトルコ料理に恋しているかと思いきや、
日本で恋している様子。
食べ物とイスラム建造物にしか興味を示さなかったカズミの、
新たな表情の発見だ。
その後、ブルーモスクのライトアップを見に行き、
ペンションに戻ると・・・。
「ヘイ、ディナータイムは終わったかい?」
「なんだい、メスット。そんな表情して。」
「バスのチケットがないから、電話かけられなかったんだよ。」
カズミー!しっかりしてくれ!
何とか、メスットに電話をかけてもらうと・・・。
「明日の朝10時にカズミが乗っていたバスがイスタンブルに
戻ってくる。すべてはそれからだ。」
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