カズミ!!

一人旅のススメ
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「コンコンコン!」

シャワーを浴びて荷造りする私たちは、
ドアを振り返る。

「ハイ」
カズミがドアを開けると、
いつもに増して不気味な表情を浮かべるメスットが
ドアのそばに立っていた。

「ノー」
「エ?」
「残念ながら、なかった。」

そのときメスットが浮かべた微笑を私は見逃さなかった。

「うそだろ?」
「イエスイエス!カズミ!あったよ!」

私たちは固く抱き合って、喜んだ!

「じゃあ、早速取りに行こう!」
「はい!でも、オノさん。ご飯食べてからでいいですか?」

カズミ。なんてカワイイやつ!

アクサライのロカンタで、食事をすることに。

「でも、本当に見つかってよかったね。
あの宿のメスットじゃなかったら、だめだったかも。
日本人宿のマスターって、トルコ語しゃべれなかったりする
らしいからね。」
「そうですね。本当によかったです。
ところで、オノさん。この食事のバランス悪くないですか?」

見ると、肉とか油系ばかり。

「俺さ、見境なく頼んじゃうから、これから突っ込んでいいよ。」
「実は、突っ込もうと思ったんですけど。そんなに食べられるの?って。」

食事後、オトガルまで行き無事に、忘れ物をゲット。
タバコはなくなっていたが、大切なものはきちんとある。

「本当によかったです。見つかって。」
「これはね、流れだよ。君は今流れに乗っているんだよ。
この流れに乗って、いい恋愛しなきゃ!」

メスットとの約束どおり、いったん宿に帰る。

「これからどこ行くんだい?」
「お土産買いに、グランドバザールまで。」
「ふーん。なら、僕も付き合うよ。」

というわけで、3人でグランドバザールに。

メスットお勧めの店があるらしくついていくと、
なかなか到着しない。
ノープロブレムを連発するメスットが最後に発した言葉は、
「ごめん。閉店してた。」

「カズミ、怒ってない?」
と気にするメスットを横目に、
常にマイペースのカズミは買い物を続ける。

私がカズミから目を話したその瞬間、事件が再び発生。

カズミ、迷子。

「メスット、どうしよう。」
「これは、問題だ。ところで、私は腹が減ったよ。」
「やれやれ。わかったメシ食って、そこで待ってて。
俺が探してくるよ。」

今まで、カズミと一緒にいた経験を生かし、
カズミの行動パターンを分析。
・・・したが、この人ごみ。見つけるのは不可能に近い。

「タカ。ペンションに戻っても、カズミは大丈夫かい?」
「しっかりした子だからね。戻ったほうがいいかも。」

ペンションに戻る途中、メスットが
「アーカズミ アーカズミ クズクズカズミ クズクズカズミ」
とイスラムの礼拝のメロディーにあわせて、歌いだす。

「クズクズなんていうと、カズミ怒るよ。」
「トルコ語でクズというのは子羊の意味なんだ。
かわいいという意味もあるんだよ。クズクズカズミ・・・。」

クズの日本語意味を知っているメスットがそういっても、
胡散臭いんだよな。

カズミを待つ間、インターネットカフェへ。
今までたまった日記を更新する。

20時過ぎ頃戻ってみると。

「オノさん。私、はぐれたら18時に待ち合わせって、言いましたよね。」

カズミ。うーん、なんて素敵なんだ。

その後、2人でイスタンブル最後の食事を。

「明日帰る、ということにちょっとほっとしているんですよ。」
「それ、わかる気がするな。」
「帰ったら、お風呂入って、お米食べて、ポケーっとして、
派遣に電話しなきゃな。」
「なんか、寂しいね。」
「なんで?」
「旅っていうのは、俺たちにとって非日常だろ?
俺はあと1ヶ月はこうして非日常な世界を生きるわけだけど、
カズミは日常に戻るんだ。
今はお互いに共有しているものが、明日にはなくなるんだよね。
それが、寂しい。」

うーん、センチメンタル。

「日本に戻ったら、がんばってみようかな。」
「きっと、相手も待っているかもしれないしね。」
「この手紙、お守り代わりに持っていたんですよ。」

出発前にその男性がくれた手紙を見て、
私の目頭が熱くなる。

「流れに乗ることだよ。
自分からその流れに逆らったら、だめだよ。」

そんな私の話を聞きながら浮かべるカズミの表情は、
恋する25歳の女性そのものだ。
どことなく、奥ゆかしくて、美しい。

「いろんな人から旅に出る前にお守りもらったんです。
これ知ってます?」
「なに、これ?」
「蛇のうろこです。旅のお守りらしいですよ。
次に旅する人に渡そうかな。」

「ハイ、オノさん。」
「え、俺にくれるの?」
「今思えば、これとかあったから、ネックレスも
戻ってきたし、危ない目にあわなかったのかも。
これ、オノさんが旅を終えるときに、別の方に
渡してくださいね。」
「いいね、それ。ロマンチックだ。」

ちょっと照れくさそうに微笑むカズミは、
とても素敵な雰囲気を感じさせながら、
すっと手を差し出す。

「いい旅でした。オノさん、気をつけて。」
「こちらこそ。カズミこそ、気をつけて帰れよ。」
「でも、オノさん。あたしたちが、こんなに熱くなっているのに、
ギョレメであったメンバーが冷めていたら、
むなしいですね。」
「そんなことないよ。あの気持ちいい雰囲気は、
なかなか作り出せないから。きっと、彼らも
また会いたい、と思っているよ。」

ペンションに戻り、メスットと記念撮影した後、
彼と再開を約束。

「タカ、イスタンブルにはまた来るのかい?」
「インシャッラー。アラーが望むならば。」
「カズミと俺のツーショット、ちゃんと送れよ。」

やれやれ、さすがはトルコ人だ。
ちゃっかりカズミと肩まで組みやがって。

・・・でも、いい友達ができた。イスタンブルに。

イスタンブル。
サフランボルではいろんな人に注意しろ、
と言われた。
だが、私にとってはここも居心地よい場所だった。
日本語上手なトルコ人。
彼にカズミと付き合って、結婚しろ、と言われたこと。
バスの中でのトルコ人。
満面の微笑で、降りるところを教えてくれたこと。
ジュース屋のトルコ人。
うちのジュースはチョクギュゼルだ!と喜んで応対してくれたこと。

私が笑顔で飛び込んでいけば、
彼らも笑顔でもてなしてくれた。
逆に、私が冷たい応対をすれば、
彼らはとても残念そうな表情を浮かべていた。

カズミと見たイスラムの礼拝の神聖な雰囲気。
彼らは、その厳しい戒律の中で生きている。
その彼らが見せる、笑顔。
他国人へのもてなし、礼儀。

それらは欧米化が進もうとも、
決して変わらないものだろうと、
サフランボルの少年や、イスタンブルのトルコ人から感じた。

明日から、再び、ヨーロッパ。
戦乱の歴史を超えてきた、ヨーロッパの息吹を
現地の方と接することで感じられればいい。

「じゃあ、カズミ。日本で、会おう。」
「オノさん。本当に気をつけて旅を続けてください。」
「そっちこそ気をつけて帰れよ。泣くなよ。」
「それはオノさんでしょ!」

再び、握手して私は出発する。

振り返ると、カズミは手を振っている。
メスットは早々とペンションに引っ込んでしまった。

カズミが何かいっている。

「愛してるよ!」

・・・失礼。それは私が発した言葉なのです(笑)。

追記
6月11日の題名チョクマンヤックとは、「超バカ」の
意味で、メスットから習いました。
サフランボルでチョクマイナと聞き違えていたおかげで、
恥をかかずにすみました。
おそらく英語ができないアポが自分のことを
「チョクマンヤック」といっていたのでしょう。

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